〈妖精配給会社〉の看板。
 外を見ているヒロシ。
 黙々と作業する妖精(灰、静、1,2,3,4,5)たち。
 爆音。
洋「あ、落ちた」
誠「隕石? ごみ?」
洋「たぶん隕石。最近はごみもほとんどなくなったらしいじゃん?」
誠「あー、今朝のニュースでやってたっけ」
洋「そうそう。あー、流星群だー」
誠「あのさ、ヒロシ、なんで?」
洋「何が?」
誠「このご時世、星が落ちようがデブリが落ちようが衛星が落ちようが、そんなの日常茶飯事なんだよ? あんたは何で毎日毎日、流星群くらいでウキウキしてんのさ」
洋「えー? だってキレイじゃん、流星群。光がこう、すーっとさ、尾を引いて、この荒れた大地に衝突する」
誠「あたしは嫌だね。毎日毎日、雨あられと降ってこられちゃ、外出できないもん。あれのせいで、世界のあちこちが廃墟になってんだよ?」
洋「落下物が全ての元凶ってわけじゃないじゃん」
誠「似たようなもんでしょ。人もたくさん死んでるし」
洋「あー、そういえばマコトちゃん、世界人口が30億を切ったんだって」
誠「あーあぁ、まったく……。創造主ってのは、一体何考えてこんな世界つくったんだか。壊すんなら最初から作るなよな!」
洋「昔は、もっと穏やかで平和だったらしいけどね」
誠「絶対うそだよ」
洋「でもさ、こんな風になっちゃったけど、〈妖精〉が普及して、世界中の人々の生活が便利で豊かになったから、悪くはないんじゃない?」
誠「不幸な人々には優先的に〈妖精〉が配給されたね」
洋「確かに、難病に苦しむ少女にも、身寄りのない老人にも、〈妖精〉は隅々まで行き渡ったけど……生きるって大変だよね」
誠「楽あれば苦ありってこと? それで死んじゃったら意味ないよねー」
洋「社長も結局変になって死んじゃったもんね。未来が分かった、とかよく分からないことを叫んでたような……」
 陽、スポット。
陽『――っ! すごい! なんてすごい生物だっ! 労働もできず、知能は世辞を言うのがせいぜいで、肉も食べられるほどもない。だがそれでもっ、ああ! なんと恐ろしいのだろう。これほど脆く、美しく、そして退廃的な生き物は、地球上のどこを探してもいない! おまけにタマゴでどんどん増える! くっ……ははははっ! 知ってしまった。俺は知ってしまったよ、未来を! 世界の行く末を見つけてしまった! 父さん、俺、今なら分かるよ。生命の神秘! 科学の勝利! ああ、ああ! ばかっ、本当に、なんてすさまじいんだ!〈妖精〉はっ! ――』
誠「まぁ、あの人は年だったしね」
洋「平均寿命もかなり下がったよね」
誠「〈妖精〉が見つかるよりもずっとずーっと昔の、えっと、なんて言ったっけ?」
洋「江戸時代って時と同じくらいの寿命らしいね」
誠「そうそう。おかげで子どもはほとんどいなくなり」
洋「それこそ、昔は少子化とか言ってたみたいだけど」
誠「今じゃ、子どもは町に一人いるだけまし、だもんなー……」
洋「〈妖精〉はすごく便利だけど……代わりに人類は薄っぺらいお世辞に満足しちゃうし、離婚率は上がるし……」
誠「その〈妖精〉を、じゃんじゃか配給してる会社に勤めてるあたしらがそんなこと言ってたって、すごく不毛なんだけどね。あ、ねえねえ、ヒロシは地下の研究室、入った事ある?」
洋「ううん。ないけど、マコトちゃんはあるの?」
誠「ないない! 絶対入るなって、社長のきつーいお達しだったからさ」
洋「何があるのかな?」
誠「さあ? もしかしたら他人には見せらんないものがわんさかあるかもね」
洋「例えば?」
誠「……エロ本、とか?」
洋「……マコトちゃん……」

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