静「お兄ちゃん、おはよう」
陽「おはよ、シズカ。なぁ、昨日のこと、覚えてるか?」
静「うん。だって眠いもん」
陽「あのロケットみたいなヤツ、昨日のうちに研究所に運ばれたんだって。さっきニュースでやってた」
静「お兄ちゃん……トイレ」
陽「ばかっ、はやく行って来いよ」
静「んー」
 シズカはける。
 父登場。
陽「あ、おはよう、お父さん」
父「ああ、おはよう」
陽「お父さん、昨日運ばれたヤツ、正体分かった?」
父「いや。何かのタマゴだということしか……」
陽「タマゴ? でもあの時、動いたような……」
父「ん? どうした、ヒナタ」
陽「いや、なんでも? それよりさ、宇宙人とかじゃないの?」
父「宇宙人? お前は何を言っているんだ。そんな――」
 携帯着信。
父「どうした。……何? タマゴがかえっただと? ……分かった、すぐ行く」
父はける。
陽「あ、お父さん!? タマゴがかえったってどういう……待ってよ、お父さん!」
 父を追ってはける。

 シズカ登場。
静「お兄ちゃぁん。……あれ? お母さん、お兄ちゃんは? どこ行ったの? ……えー……。じゃぁお外で遊んでくるー」
シズカはける。

妖精登場。
きょろきょろして、発声を試みる。
灰「……。あ……あ、う……あぁ、あー……んー」
 ヒナタ、父登場。
陽「待ってよ、お父さん! ねぇ、いいよね。俺にも宇宙人見せてよ」
父「何が起こるか分からないんだ。さっさと帰りなさい、ヒナタ」
陽「ここまで来て帰ったら男じゃねえよ! ていうかお父さんばっかずるい! 俺も宇宙人見たいー、触りたいー!」
父「我儘な事を言うんじゃない。母さんと家にいな……さ、い……」
陽「え……。これが、宇宙人?」
灰「……ナ、ナナナ、ナナナナナ……ナナ、ナ、ナ、ナナナナ……」
陽「わっ! 喋った」
父「言葉なのか? 人類のものではないようだが……」
陽「宇宙人語?」
灰「ナナナ……う、ちゆ……う、ちゅうじん」
父「日本語!?」
陽「宇宙人って、言ったんじゃない?」
灰「う、宇宙人……ナナナ……宇宙人では、ナイ」
陽「おお! すっげー!」
父「日本語を理解できるのか?」
灰「ナナ。こ、こんなつまらない生き物を飼ってくださってありがとうございます」
父「飼う?」
灰「ナナ……なんて、知的な男性でしょう」
陽「お父さんのこと?」
灰「なんて、元気な、男の子でしょう」
陽「え、俺のこと?」
灰「美しい、日本語を、話します、ね」
父「……お前は何者だ?」
灰「名称は、ありません。高い、知能を持つあなたがたが、お好きな、ようにお呼びください」
父「一応の会話は成立するのか……」
陽「でもなんか……こいつ、地味だよ、お父さん」
父「全身は灰色の毛。これは、羽か?」
陽「しっぽもあるよ」
父「おいお前、ここに乗ってみろ」
灰「はい。よろこんで」
父「体重は……3キロか。ネコより軽いな」
陽「人間と同じくらいの大きさなのにねー」
父「これを持て」
灰「はい。かしこまりました」
父「筋力はほとんどないのか……これは読めるか?」
灰「はい。よろこんで。ナナナ……1、2、5、9」
父「全部足してみろ」
灰「はい。かしこまりました。……。ナナ、ナナナ……申し訳ございません。高度な知識を、持っておりません」
父「知能もそれほど高くないな」
陽「なーなー、くるって回ってみて」
灰「はい。よろこんで」
陽「おー。羽だけキレイだね」
灰「もったいない、お言葉です」
父「……。労働もできず、知能は世辞を言うのがせいぜいで、肉も食べられるほどもないようだ」
陽「全身の毛も地味だしね」
灰「はい。あなた方のような、高等技術はございません」
父「どうやって繁殖するんだ?」
灰「ワタシは、単性生殖が可能です」
陽「どういう意味?」
父「ヒナタ、お前、まだいたのか……。一人でタマゴを生んで増えるってことだ」
陽「へー。口から吐くのかな……。あ、ご飯は?」
灰「はい。何でも、食べます」
陽「俺が残したピーマンも!?」
父「ちゃんと食べなさい……だがそうだな。残飯でもいいなら手間がかからないな」
灰「とても柔軟な、思考を、お持ちですね」
陽「どんどん言葉が上手くなるね」
父「悪魔でもなく天使でもない、害はないが益もない。そうだな、お前はさしずめ、〈妖精〉といったところか……」
陽「ようせい……」
父「あ、お前いつまで居るんだ。帰りなさい」
陽「分かったよー。そいつも見れたし……。ヨウセイかぁ……」
父「まったく、好奇心旺盛なところは、私に似たのかな……」
灰「あなた方人類の進歩は、すばらしい意欲から成るものなのですね」
父「一部の人間だけだろうがな……」
灰「お世辞を聞き入れないとはあなた様はなんという高い見識の持ち主でございましょう」
陽「あーあぁ! 宇宙人じゃなかったのかー……」
灰「……ナナ……」

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