○川のそば(夜)
大雨のSE
  走って来た大工。鬼六とシノを探すが暗くて見えない。
大「鬼六! シノ! 返事をしろー!」
  どこからか鬼六の声のみ。
鬼(OFF)「大工! シノが倒れてる!」
大「! どこだ!?」
  倒れているシノを見つける大工。
大「シノ!」
シ「……ハマジは……?」
大「無事だ。僕の家にいる」
シ「あいつは、悪くないんだ……」
  ほっとして気絶するシノ。
大「おい!」
鬼(OFF)「ハマジをかばったんだ。はやく連れて帰れ」
  シノを肩に背負って。
大「あなたはどうする!?」
鬼(OFF)「なめるな! 私は鬼だぞ? 自分の面倒くらい自分で見る」
  逡巡するが決意する大工。
大「分かった」
  身体の向きを変え、付け加える大工。
大「名前、分かったんだ」
鬼(OFF)「え……」
大「だから」
                                    (スポット)
大「僕はあなたに名前を告げるよ。あなたと、僕の名前を――」
鬼(OFF)「――(やさしく)そしたら、呼んでね。私も君の名を呼ぶから」
  笑顔の大工、歩きだす。
                                  大工(Fr・O)
                                  鬼六(Fr・I)
                                    (スポット)
鬼「そっか……。分かったんだ、名前。若造が……(実は嬉しい)。それは是非聞きたかったな」
  決意の顔。
鬼「けど、私も約束は守るから……」
  後ろを向いて、意志強く歩きだす。
                                  (夜、朝のホリ)
 ×  ×  ×
○川のそば(朝)
SE
  走って来た大工、鬼六を探すがどこにもいない。
大「鬼六……?」
  健在の橋に気付く。
大「あの大雨じゃ流されたと思ったのに……」
  近づいて、色の変わっている橋に驚く。
大「……! 石に……なってる……」
  フラフラと鬼六を呼ぶ大工。
大「おい……おに、ろく……? 鬼六。鬼六!」
                                    (スポット)
  顔を覆って。
大「橋なんか、放っていけば良かったのに……せっかく、せっかくあなたの切望する名前が分かったん
だよ? なのに、あなたがいなければ意味ないじゃないか!」
大「目玉だって手足だって、何だってあげる。だから……」
  立ち尽くして。
大「返事をしてくれよ」
大(M)「   」
                                      (暗転)

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