喧騒が耳に痛い。
いつものことだが。
「オッス、姫!」
そう言って座っている俺の背中をたたくのは、
俺があまり友達だとは思われたくない奴だった。
「あれ?どうしたの姫、寝不足?」
「お前には関係ないだろ、つうかその呼び方やめろって」
「なんでだよー、ピッタリじゃないか」
そんなやりとりをしながら、嵐山 拓馬は笑いながら俺の前の席に座る。
「早乙女君」
声をかけてきたのは委員長の小野田 小百合。
「体育祭の出場書類、まだ未提出なの」
「あぁ、悪い。今日の放課後までに出すよ」
「……そう……」
そう言って委員長は隣の席に着く。
ホームルームの鐘が鳴った。

ここは風ノ上第2高校。
中の中程度の学力であればだれでも入れる公立高校。
そこそこ新しいからか、
綺麗な校内は近所おばさま方には人気らしい。

そして俺はここの2年生。
さっきの委員長はかわいくて校内でもかなり人気だし、
嵐山はスポーツ万能でやっぱり人気。
俺は取り立てて目立つこともないありふれた凡人。
なのに嵐山はやたらと俺に構う。
勘弁してくれ、目立っちまうだろうが。

「……と、いうわけで、来週から体育祭だ。
 よって今週は午前授業、午後からは準備だ。
 しっかりやれよー。じゃ、解散」
担任の声ではっと我に帰る。
いかん、またか。
最近やたらと眠くて、体を動かしてないと、すぐウトウトしてしまう。
そう思いながらも再びまぶたが重くなる……
「なあ、おい聞いたか、夢耕!? 委員長も白らしいぜ!今年の体育祭は盛り上がりそうだな!!
? なあおい、聞いてんのか、夢耕ううううう!!」
睡魔が駆け足で去っていく。
助かった。また意識が遠のきそうだった……。
「き、聞いてる、聞いてるから。だから離れろ、近い」
あと二センチたらずで互いの鼻がつくという位置で、
まくしたて、畳みかけるように喋ることで有名な男
――花木朽哉は、悪い悪いと笑った。

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