冬休み初日。

 特にすることもなく、会う人もいない僕は
 絵具の白と黒を、混ぜきれていないような空の下を歩いていた。

  特に思うことも、考えることもなく
 ただぼーっと、そこを歩いていた。
 歩いていて。
 それは突然、そう、
 突然、あたりまえのようにそこに在った。

 マーブル状のベージュ色のレンガ。
 小ざっぱりした、それでいて掃除は行き届いているような小さな窓。
 滑らかな茶色のドア。
 そして真黒な屋根。

 それは、まるっきりに不自然で。
 得も言われぬ違和感があって。
 あきらかに周りの風景に不似合いで。
 だが、
 だが美しい――。
と、素直に思った。
 嘆息する。
     あぁ、きれいって、きっとこういうのをいうんだなぁ・・・・
 だけど、
 と、現実をみる。
 その、だれもが声をそろえて美しいと言えるような建物は


 つい昨日までは、なかった。
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