ここで少々思案してみよう。
辺りは随分薄暗く、あと小一時間もすれば雨が降ってきそうな曇天ではあるが、人通りもなく、不審な建物の目の前で随分奇妙な状況ではあるが、僕はここで少し考えてみようと思う。
つまりこの、マーブル状のベージュ色のレンガに、こざっぱりした、けれども掃除は行き届いているような小さな窓のある――ようするに、このレトロ感あふれる、あまり日本では見かけないような外観のこの一戸建ての建築物が、なぜだか昨日までは全く見たことがなかったということについて、僕は思案してみようと思うのだ。
と言っても、探偵でもなければ警察官を目指しているわけでもない、加えて、たいして頭も良くないこんな僕が、そもそも、今分かっている、つまり建物の状態なんかの確認以外には、特に何か考える必要など、考える事項などないわけだが。
だが、やはり一つあえて言うならば、今目の前に当然のようにあるこの建物が、僕には全く覚えがないということだろう。
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