(暗転)
○電車(朝)
  中央にサクラとミズキ。端の席に足組んで読書するツバキ。
SE ドア
ミ「っ、すまねえ」
サ「ううん。ありがとう……」
寝むそうに乗ったカリン。                        (Fr・I)
カ「ねむ……。あれ? 人がいない……あ、おはようござい……」
  サクラ達を見つけて硬直するカリン。
  サクラとミズキがしっかと抱きあっている。
SE 電車
  口を開けっ放しのカリン、我に帰り。
カ「な、何をやっとるかああああ!」
サ「あ、カリンちゃん、おはよう」
ミ「おう、がきんちょ」
カ「いやいやいや、おかしいですよ! 昨日も私が一人馬鹿なおちだったのに、朝からこれは一体どういう事ですか」
ミ「聞け、がきんちょ、俺はやっと見つけたんだ」
カ「はい?」
サ「私ね、やっと分かったの。自分がここにいる理由」
カ「どういうゴールを目指してますか?」
サ「カリンちゃん、この肩掛けをくれたの、やっぱりこの人だったよ。私の片思いだった人」
ミ「彼女は……俺が高三の時に事故で亡くなった俺の片思いだった人だ」
カ「……。どうぞ続けてください」
ミ「俺はずっとサクラさんを好きだった。高三の時、それを伝えようと思った矢先、彼女は事故に……!」
サ「その時、私は事故現場の傍にあった桜の木の精にもちかけられた。このまま極楽浄土に行くか、それとも地上に留まって思い残しをやり遂げるまで彷徨うか……」
ミ「あれから一一年。気づいてやれなくてすまねえ!」
サ「ううん。平気だよーう。こうやって会えたから」
ミ「っ! サクラ!」
サ「ミズキくん!」
カ「え、ええ!? ええええええええええええ!」
                                  (C・O)(C・I)
  サクラの姿は無い。
カ「あれ? サクラさんが……」
ミ「サクラは……いってしまったよ」
カ「……おじさん……」
  カリン、ツバキに気付く。
カ「あれ? 君もいたんだ……(ツバキを見て)」
ミ「お前ら、聞こえたか? さっきの、消える間際の、サクラの声」
  ツバキ、本を閉じて。
ツ「……あぁ」
カ「願い事を一つ……かぁ」
ツ「あれ……(窓の外を見るように)」
  カリン、前の方に出て。
カ「桜の木……」
  ミズキ、ツバキ、前に出て。
ミ「まだ二月なのに……」
ツ「だけど、綺麗です……」
カ「……やっぱ顔綺麗だね、ツバキ君(ぼそっと)。あ……」
  ポケットから栞を出すカリン。
ツ「それは?」
カ「昔、六歳くらいの時かな。一度だけこの街を訪れたときにね、あの桜らへんで迷子になったんです。その時にね、きれいなお姉さんが慰めてくれて、これをくれたんです。もう二度と会えなかったけど。だからこれは私の大事なお守り。告白した時だって持ってたんだから!」
ミ「それ、高校んときに俺がサクラにやったんだ。肩掛けよりももっと昔にさ」
カ「……。返そうか?」
ミ「いや。お前が持ってる方がいいさ」
ツ「さくらという言葉は、神への尊敬後「さ」と座る意味の「くら」でできているそうです。だから「桜」は昔から神が座る場所だとされたようです」
ミ「サクラってさ、実家に古い桜の木があって、すっげー大事にしてたんだ」
カ「……そっか」
ツ「……。願い事、決まりましたか?」
カ「……ほしい物があるんです」
ミ「俺も」
ツ「僕もです」
ミ「けど! 仕事は自分で探すから、サクラ」
ツ「彼氏がいようが年上だろうが」
三「努力してやんよ!」
カ「キーホルダー、もう一個ほしいなー」
                                       (BGM)
                                       (終わり)
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