SE ドア 電車
○電車内
  終始電車の走る音。座席が横に並ぶ車内。
  駆け込んできたカリン(17)
カ「どぱぱーん! セーフ! ま、間に合たぁ……。電車通学ってずっと憧れだったけど、時間厳守だから大変だなぁ……」
  一度ポケットに手を入れる。
  歩きだそうとするがドアに挟まっていて進まない。
カ「ん? (鞄を引っ張る) あれ? あれ? げ、うっそおおお!」
  一人で大慌てするカリン。
  後ろからミズキ(27)の声。
ミ「四つ先までそのドア開かねーよ?」
カ「ええ! そ、それは困りますよぉ。私は三つ目で降りるんだから……(引っ張りながら)」
ミ「しっかり持ってな」
カ「え?」
  次の瞬間鞄を引っ張るミズキ。
SE ぶち
カ「え!? いやあああ!」
ミ「良かったじゃん」
  勢いよくふり返るカリン。
カ「全然良くないから!」
ミ「悪いと思ってるよ? けど他にいい手がねーだろ」
カ「そ、それは……」
(OFF)「まもなくー、ヤオキー、ヤオキー」
ミ「あ、じゃ、俺はここで。あ、そうだ。あんた、車内ではお静かに」
SE ドア
カ「あ、ちょっと――」
  さっさと出て行くミズキ。
                                      (Fr・O)
SE 電車
カ「ぐ、ぬおおおお! 昨日せっかくもらったのにいいい!」
  カリンの横を通ったサクラ(18)、肩掛けを落とすが気付かない。
  拾って呼び止めるカリン。
カ「あ、あの、落としましたよ?」
サ「え? ……(少し驚き)。あ、ありがとう」
カ「素敵な肩掛けですね」
サ「――大事な人に、もらったの」
カ「そうなんですか? それじゃぁ大事にしなきゃ! 私も昨日大好きな人にキーホルダーもらったんですけど……」
サ「けど?」
カ「……せっかくもらったのに……あんのチャライ兄ちゃん、覚えてなさいよぉ!」
サ「え、急にどうしたの?」
カ「いいですかお姉さん! 大事なモノはほんっとーに大事にしなきゃダメですよ!?」
サ「……(呆気)うん、気をつけるね」
カ「どぱぱーん! 超ピンチだよ! 謝んなきゃなぁ。あ、なんかあげた方がいいのかな……」
  サクラ、少しキョロキョロして。
サ「ねぇ、ところであなた、本当に私が」
  遮るように。
カ「ね! お姉さん! おわびに何あげたらいいかな、お姉さん? あ、姉さんじゃ失礼か。私、カミキ高校二年の斎藤カリンっていいます」
サ「へ? あ、カリンちゃん? えっと……(少し困って)私の事はサクラって呼んで」
カ「? サクラ、さん?」
  うなずくサクラ。
二人で椅子に座る。
カ「そういえば、サクラさんの大事な人ってどんな人ですか?」
サ「え? そうね。ちょっと不器用だけど、本当はとっても優しい人、かな」
カ「恋人?」
サ「ううん。ぜーんぜんそんなんじゃないよ。ずーっと、私の方思い」
カ「えー!? こんな綺麗なのに?」
サ「告白とかはしてないから」
カ「もったいないなー。せっかくこんな綺麗なのに」
サ「そんな事ないよぉ」
カ「そんなことありますよ! 初めて目が合ったとき、わー、なんて美人なんだろうって、私思ったもん」
サ「ありがとう。カリンちゃんにも大好きな人がいるんでしょ? どんな人なの?」
カ「どぱぱーん! いやいや、サクラさんから見れば絶対ふつーの奴ですよ」
サ「えー? カリンちゃんみたいな可愛い子が好きになっちゃうくらいなんでしょ?」
か「そ、それは……! で、でもでも! サクラさんみたいな素敵な話しじゃないし、それに」
  サクラを見て。
カ「サクラさんの好きな人の方が、きっとずっとカッコイイですよ」
  カリンをぎゅーっとするサクラ。
サ「ありがとう。カリンちゃん」
カ「わー! すっごい美人さんに抱きしめられちゃったよぉ」
  お年寄りに席を譲るツバキ(15)に気付くカリン。
サ「? どうしたの?」
カ「中学生なのに、えらいなーと思って……」
  サクラもツバキを見て動きが止まる。
(OFF)「次はーカミキー、カミキー」
カ「あ、降りなきゃ―― ? サクラさん、どうかしました?」
サ「え? あ、ううん、平気だよーう」
  ポケットの栞を一回握って。
カ「あ、あの、サクラさん! 私、この間この街に引っ越してきて、昨日からずっとこの電車なんです。あの……」
  サクラ、微笑んで。
サ「じゃぁ、また明日会えるね、カリンちゃん」
  カリン、笑顔になって。
カ「それじゃ私、行ってきます!」
  お辞儀するカリン。
サ「いってらっしゃい。頑張ってね」
SE ドア開
  元気に出ていくカリン。手を振るサクラ。
                                      (Fr・O)
SE ドア閉
                                       (暗転)
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