(暗転)                      
                                         (スポット)
  狐の後ろに烏、背中あわせ。
狐「幸せって言うのは、恐るべき絶望があるから甘美なのだ。だから、生きとし生けるものは皆、絶望を乗り越えようとする。その先にあるものを見るために」
狐「なぁ、烏?」
  烏出てくる。ふて腐れた様子。
烏「へーへー、あたしが悪―ございますよぉ。けどさ、あいつらイイ奴なんだよ」
狐「いいのか? お前のこと、覚えていないぞ」
烏「べーつにー」
狐「お前なぁ、私が何度でも転生してやるからって、ホイホイ生き返らせちゃいかんでしょ」
烏「だからこうやってちゃんと……」
  悲しそうに。
烏「ちゃんと関わって、よく見て、しっかり、理解して……な、仲良くなって……決めただろ……」
  狐、烏の頭を撫でながら。
狐「烏……。馬鹿だなぁ。離れがたくなるなら、お前が兎の代わりに命を捨てなければ良かっただろ」
烏「だって! だって……すごく優しい人だったんだ。一人は寂しいから。皆と一緒にいるべきだよ」
狐「みんな、ね」
烏「だから、いいんだ。あたしはこれで良かったと思ってる」
狐「ふーん……。えいっ」
烏「いってえ! な、なにすんの!」
狐「おやおや烏、かわいそうに。こんな重傷、私じゃ治療できないね。しょうがないから近くの病院にでも行ってきなさい」
烏「はぁ!?」
狐「お前は烏だからね。一番近い動物病院へ行くんだよ」
烏「あ……」
 出て行こうとして。
烏「あのさ、あたしは一人ぼっちじゃないね。カッコイイ神様がいるからさ!」
                                         (Fr・O)
狐「そうかいそうかい。良かったねぇ。私も一人じゃないよ、元気なお前がいるからね」
                                         (BGM)
狐(N)「ここはアニマルメディカルセンター。太陽の周りを回る青い惑星の小さな国のどこかの町のとある動物病院。ベルの鳴るドアを押しあけ現る待合室に、今日も――」

                                         (Fr・O)
                                         (F・O)

○待合室
静寂。
犬(OFF)「だからいってええええええええ!」
  全員の視線、扉へ。
SE 扉 ベル
  犬と烏が同時に入って来る。
兎「こんにちは」
鳩「はじめまして」
犬「あれ? 初めてみる顔だね」
猫「病気、ですか?」
烏「……。こんにちは。はじめまして。ちょっとケガしちゃって」
兎「そうなんだぁ。大丈夫?」
烏「ありがとう。あ、あの」
兎「あぁ、わたしはウサギのダッチ、BBっていうの。あなたは?」
犬「あ、ちょっと、ちょっと、君ぃ? 不用意にその子に近づかないの!」
  鳩、咳払い。
烏「……ラッシー」
兎「ラッシーちゃん? なんだか素敵な名前だねー」
  皆、烏を見る。
烏「……。(笑って)ありがとう! あたしもすごく気に入ってるんだ」
                                      (BGM Z・I)
                                       (照明 F・O)
  (雑談でつなぐ。)
狐(OFF)「次の方、どーぞー」
  扉に向かう鳩。
鳩「わたしだな」
  烏に隣をすすめる猫。
猫「ここ、どうぞ」
                                          (終わり)

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