(BGM)
                                 (スポット 顔が陰るように)
狐(N)「太陽の周りを回る青い惑星の小さな国のどこかの町のとある動物病院。ベルの鳴るドアを押しあけ現る待合室に、今日も――」
○待ち合い室(春)
(BGM)
遠くでカラスの声。
静寂。
犬(OFF)「ってええええ!」
全員の視線、扉へ。
兎「けほっけほっ」
SE 扉
犬「ありえない!なんだこの痛さ。あのやぶ医者!覚えてなさいよ!?」
(Fr・I)
兎「けほっけほっ……サンちゃん、大丈夫?」
犬「BB……(ぎゅっとする)。あんたも次からこの病院はやめときなよ? ヤブ中のヤブ、下手くその中
の下手くそ、つまりヤブくその中のヤブくそってことよ!」
兎「えー、何それー。けほっ」
鳩、咳払い。
犬「ん? なんだ、ノバトのおっさんも来てたのか。どうした、年のせいで次はどこ壊したのさ?」
鳩「失礼だが、レディ。私は貴女より長生きしている」
犬「だから? 目上の人は敬えとか、そう言いたいわけ?」
  無言の鳩。
  鼻で笑う犬。
犬「大変だな! 長生きしか取り柄がない人は」
  膝を叩く鳩。
兎「そんなこと言っちゃ駄目だよ、サンちゃん?」
犬「BB……。うん、ごめん」
猫「……言っちゃ駄目だよね。予防注射で泣いちゃう人が」
犬「「泣いてないし! 」
  萎縮する猫。
犬「目に汗溜まっただけだから!」
兎「けほっ……すごく痛かったんだよね。サンちゃん」
犬「そうだよ!分かってくれるのはあんただけだよ!」
  遠くでカラスの声。

SE 衝突
(Fr・I)
  窓から落ちてきた烏。
烏「ぐえっ!」
  全員の視線、窓辺へ。
烏「びっくりしたぁ。案外難しいな……」
烏に寄る兎。
兎「けほっけほっ……大丈夫?」
烏「ほえ? あー大丈夫、大丈夫。ありがとう。はっ! なんてかわいい。えーと……ウサギさん?」
兎「うん。ダッチなんだー」
烏「へー。ホントにパンダみたいだ」
兎「えへへー」
烏「えへへ……」
兎と烏の間に割り込む犬。
犬「ストーップ!! ちょっと、ちょっと、君ぃ? 気安くこの子に近づかないの」
烏、態度急変。
烏「おねえさん、何?」
犬「親友よ!(胸を張って)」
烏「……あたし、おねえさんみたいなヒステリックおばさんと親友になった覚えは、おねえさんがそこ
のダッチの人と知り合えた奇跡くらい、ないと思うんだけど」
犬「あんたじゃないわよ! BBと親友なの!」
猫「……っんふ、ふふふ……(笑いを堪えきれないシャルマン)」
犬「おやおや、おチビさんが言ってくれるね!」
  猫に向かって。
犬「あんたもね!(スパーんと)」
涙目の猫。
兎「ほえー。けほっ……シャル君大丈夫?」
犬「BBも、こんな子と仲良くなっちゃ駄目よ!」
兎「あ、こっちはサンちゃん。三河犬で、三州犬っていうからサンちゃん」
烏「純血種はもうほとんどいない愛知生まれの希少種だね」
犬「BB! 何紹介しちゃってんの」
思い切って兎に言ってみる烏。
烏「あたしもBBって、呼んでいいかな?」
兎「もちろんだよぉ。あなたは何て言うの?」
烏「あ、あたしは……特に何も」
兎「じゃーあ、カラスのラ、ス、で、ラッシーちゃんって呼んでもいい?」
犬「BB、なんて安直な……」
烏「あ、ありがとう」
ぼそっと言う鳩。
鳩「Ms.BBは好かれやすい」
犬「そんなのは私が一番知ってるよ!」
兎に尋ねる烏。
烏「あちらの紳士は?」
犬「は? 紳士なんてどこにいる」
兎「ノバトのおじさまって、呼んでるよ。とってもダンディーだよねー」
烏「ノバトって、天然記念物のシラコバトのこと?」
兎「けほっけほっ……そーそー」
  照れて顔を背ける鳩。
犬「何デレデレしてんだおっさん!」
鳩「べ、別に、デレデレなんてしとらんわ」
烏「足腰は労ってくださいね、おじさま。せっかく素敵なんですから」
鳩「む……(咳払い)」
犬「だーからデレんなこのむっつりが!」
兎「ノバトのおじさま、腰が痛いの?」
鳩「……問題ない」
兎に心配される鳩にムッとして。
犬「老眼の後は腰か! お見舞いに行ってあげようか? 花束がいい? それともパンの耳とか?」
兎「サンちゃん(ピシャリと)」
  少しの沈黙。
犬「わ、悪かったよ。と、年なんだから気を付けなよ!」
兎「ごめんね、おじさま」
鳩「気にしとらん……」
烏「彼は……ネコ?」
兎「そうだよー。エジプシャンマウのシャル君でーす。美少年でしょー」
  顔をそらす猫。
烏「照れ屋さん?」
  本で顔を隠す猫。
犬「シャルマン、ナイスシカト!」
兎「もうサンちゃんたら……けほっ」
猫「……。1953年イギリス誕生、タイプセミフォーリン、短毛種、特徴は高い運動能力と発達した筋肉、正式名称エジプシャンマウ、僕はシャルマン。その人はシャルと呼びます」
烏「……う、うん」
犬「しゃべんのかよ!」
  ふいと顔をそらす猫。
犬「ホント性格悪いな」
奥から呼び出しの声。
狐(OFF)「シャルマンくーん、どうぞー」
  本を閉じて立ち上がる猫。
烏「みんな仲いいね」
兎「うん(嬉しそうに)」
他「いやいや(そろって)」
出ていくシャル。
兎「……けほっけほっ」
駆け寄る犬。
犬「わー、無理するなよBB」
兎「大丈夫だよぉ。ここ病院だよ? お医者様もいるしねー。けほっ」
駆け寄る烏。
烏「わー、無理しないでよBB」
兎「……うん、ありがとう(やさしく)」
犬「え、なんか態度違うけど!?」
兎「そんなことないよー」
犬「……。BB(ぎゅっとする)。けど、ここにいるのはヤブ中のヤブ、下手くその中の下手くそ、つまりヤブくその中のヤブくそな医者なんだよ!?」
兎「えー、何それー。けほっけほっ」
  ノバト、咳払い。
                                           (暗転)
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