○室内
  薄暗い部屋、奥に引き戸、客席を向く大工(24)。無表情で語り。
                               (スポット1 F・I)    
大「あなたの大切なモノはなんですか? 例えばこの二人(ふり返る)」
                               (スポット2 C・I)
  (M)大工より後ろ、会話して笑い合うシノ(18)とハマジ(15)。
  目を離さず、抑揚なく言う大工。
大「世界で、たった二人の兄妹」
                               (スポット2 C・O)
  客席に向き直って、少し前向きな声音で。
大「昔話をしよう。記憶をなくした、美しい鬼の話しだ(目を伏せる)」
                               (スポット1 F・O)
                                      (暗転)

 ×  ×  ×
○村の外、川のそば(夕)
  川に向かう途中、頭を搔きながらふて腐れた大工(19)。
  奥で鬼六(外見16)、遊んでた兄(13)妹(10)に元気に手を振って別れている。
                                   SE(F・I)
大「信じられん。僕がどうなってもいいってのか……(ぶつぶつと)」
鬼「ばいばーい(後ろ向き)」
大「……ん?(鬼六に気付く)」
鬼「あー楽しかった! (振り向いて)ん? 」
大「うおぃびっくりしたぁ! 鬼が出たかと思った。コラ子ども、こんな所で何してる?」
SE(S・O)
鬼「……誰?(少し大人めに)」
大「僕は――村で大工をしている者だけど」
  すぐ幼い顔に戻って大工に近づく鬼六。
                                 (BGM S・I)
鬼「――はじめまして、大工さん(笑顔で)。皆で遊んでたんだよ。大工さんこそ、どうしてこんな場
 所にいるの?」
  思い出して面倒臭そうに言う大工。
大「代々の言い伝えと村の言いつけでね。川に橋を架けたいんだ」
  少し驚いたような鬼六。間ができる。
大(M)「……ん? 何だ……?」
鬼「そう、なんだ(目を細めて)」
  鬼六、大工からぱっと離れてまた幼い顔。
鬼「でも大工さん。この川は大きいうえに、昔から大雨になると流れが激しすぎて、ちゃんと 橋を渡
せないんでしょ?」
                                 (BGM S・O)
大「よく知ってるね。そう。だから無理だって言ったんだけど……。(溜息)村の連中、全然人の話し
を聞かない」
                                    M(Z・I)
  大工を見ないで言う鬼六。
鬼「……橋くらいかけてあげるよ?」
  動きが止まる大工、鬼六を見て。
大「なーに言ってんの、おチビさん」
  大工にまっすぐ向き直り近づき、声音低めに言う鬼六。
鬼「勿論ただで、じゃない。代わりに、そうね、大工さんの目玉を頂戴よ」
  目を離せず一歩後ずさって喉が鳴る大工。(緊迫感)
鬼「……。その気になったらまた来い(Fr・O)」
                                    M(Z・O)
  目を見開いたままくずれる大工。少し荒い呼吸。
大「……。あれが……鬼、か……?」
                                     (F・O)

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