雨の後の桜は好きよ。
それまで陽気な気温の中を、惜し気もなく咲き乱れていた頃とは違う。
雨上がりの桜並木の下を歩いたことある?
馬鹿みたいに開いていた花は雨を受けてつつしみを持ち、気持ちのいい空気の中でしっとりと淡く輝く。
雨粒にふられて次々と散った花びらは、その下のどんな道でも、目も眩むほど鮮やかな桃色の絨毯を拡げる。
水溜まりにたゆたう花弁。
伏せ目がちな枝葉。
私は雨の後の桜が好き。
ねえ、聞いてる?
ほら、雨が止んだわ、外に行ってみましょ?
……ねぇ、あら、眠ってしまったの?
先に一人で眠るなんて、私を置いていかないでよ。
ねぇ……。
私を一人ぼっちにしないって約束したじゃない。
満開の桜みたいに、そんな風に微笑むあなたなんて嫌いよ。
そんな、満足そうな顔はやめて。

置いていかないで。
私を一人にしないでよ。
一人は寂しいの……。
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